無限遠点で0に収束する連続関数が有界であることの証明
\(\mathbb R\) 上で定義された無限遠点で0に収束する連続関数が有界であるという命題は、数学の様々な分野で重要な役割を果たしています。しかし、その証明は初学者にとっては少し難解であることがあります。
本記事では、そうした初学者でも理解しやすいように、厳密な数学的議論を丁寧に説明します。
無限遠点で0に収束する連続関数とは何か
無限遠点で0に収束する連続関数の定義について確認します。ご存知の方は読み飛ばしていただいて大丈夫ですが、初学者にとっては、あらためて概念や定理を再確認することが大切です。
連続関数とは、定義域内のある点において微小な変化があった場合に、その関数の値にも微小な変化が生じるような関数のことです。つまり、連続関数は、定義域内で微小な変化があっても、その関数の値が飛躍的に変化しないような関数を指します。
数学的には、ある関数\(f\) は、その定義域内の任意の点aにおいて、
\begin{align*} \lim_{x \to a} f(x) = f(a) \end{align*}
あるいは別の書き方をすると、
\begin{align*} \forall \varepsilon > 0, \exists \delta > 0 \quad \text{s.t.} \quad |x-a|<\delta \Rightarrow |f(x)-f(a)|<\varepsilon \end{align*}
がなりたつときに、連続関数といいます。
また、ある関数fが無限遠点で0に収束するとは、以下の条件が成り立つことを言います。
\begin{align*} \lim_{|x| \rightarrow \infty} f(x) = 0 \end{align*}
有界な関数とは
続いて、有界な関数の定義について再確認しましょう。
関数\(f\) は、実数\(M \in \mathbb R \) で、\(\sup_x |f(x)| \leq M\) を満たすものが存在するときに有界であるといいます。
主張とその証明
あらためて主張を書きます。
\(\mathbb R\) 上で定義された無限遠点で0に収束する連続関数は有界である。
それでは実際に証明してみましょう。
(証明). 無限遠点で\(0\) に収束するので、$R > 0$ で、
\begin{align*} R \leq |x| \Rightarrow |f(x)| < 1 \end{align*}
をみたすものがとれます。そして、有界閉区間上の連続関数は最大値と最小値をもつというよく知られた定理から、\([-R, R]\) という有界閉区間上で連続関数$|f|$ は最大値をもちます。その最大値を\(M\) と書くことにすると、
\begin{align*} |x| \leq R \Rightarrow |f(x)| \leq M \end{align*}
が成り立っているということです。
つまりこれらを合わせると、任意の\(x\) に対して、
\begin{align*} |f(x)| \leq \max \{ M, 1\} \end{align*}
が成り立つということが言えるので証明が終わります。
おまけその1
無限遠点で0に収束する連続関数が有界であるという命題は、実際には定義域が \(\mathbb{R}\) である場合に限らず、より広いクラスの関数にも適用できます。
たとえば、定義域が\(\mathbb R\) の非有界な閉集合を考えてみましょう。もちろん、有界な閉集合の場合には無限遠点での値を考えることは意味を成しません。
非有界な閉集合を考えてみると、任意の\(r>0 \) という実数に対して\([-r , r]\) との共通部分が有界閉集合になりますですのでその上で有界閉区間上の連続関数は最大値をもつという定理を用いればよいでしょう。
おまけその2
無限遠点で\(0\) に収束するが、非有界である関数はあるのでしょうか。あります。
\(f(x) = \frac{1}{x}\) は、$x$ が無限大に近づくにつれて \(0\) に収束する連続関数ですが、同時に原点に近づくにつれて関数値はどんどん大きくなっていきます。つまり、この関数は無限遠点で \(0\) に収束するが、非有界な連続関数です。
以上のように、無限遠点で\(0\)に収束する関数であっても、非有界な関数は存在することがわかりました。
おまけその3
実際には、別に無限遠点での値が0である必要はありません。適当な実数に収束してさえいれば、途中からは大体その実数に近い値の範囲に収まるので、全く同じ流れで有界であることが証明できるでしょう。
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