n次正方行列の相異なる固有値に対する固有ベクトルは一次独立であることを証明します。
n次正方行列の相異なる固有値に対する固有ベクトルは一次独立であることの証明!!
線形代数学において、固有値と固有ベクトルの概念は非常に重要です。
これらは行列の基本的な特性を捉え、多くの応用分野で重要な役割を果たします。
特に、異なる固有値に対応する固有ベクトルが一次独立であることは、行列理論の基本定理の一つです。
n次正方行列の相異なる固有値に対する固有ベクトルは一次独立であることを証明します。
すなわち、以下の命題を証明します。
\(A\)をn次正方行列とします。
\(\lambda_1, …, \lambda_m\)を\(A\)の相異なるm個の固有値とします。
\(v_i\)を固有値\(\lambda_i\)に対応する固有ベクトルとします。
このとき、\(v_1, v_2, …, v_m\)は一次独立です。
この命題を証明する前に、ベクトルたちが一次独立であることの定義を思い出しておきましょう。
k個のベクトル\(u_1, …, u_k\)は
\begin{align*}c_1 u_1 + \cdots + c_k u_k = 0 \Rightarrow c_1 = c_2 = \cdots = c_k = 0 \end{align*}
が成り立つとき、一次独立であるといいます。
それでは、実際に証明に移りましょう。まず、
\begin{align*}c_1 v_1 + \cdots + c_m v_m = 0 \end{align*}
とします。
\begin{align*} (A – \lambda_2)(A – \lambda_3) \cdots (A – \lambda_m) \end{align*}
を両辺にかけることを考えます。
ここで、
\begin{align*} (A – \lambda_2)c_2 v_2 = c_2 \lambda_2 v_2 – c_2 \lambda_2 v_2 = 0 \end{align*}
となります。
同様に、任意の添字\(i\)について
\begin{align*}(A – \lambda_i)c_i v_i = c_i \lambda_i v_i – c_i \lambda_i v_i = 0 \end{align*}
となることを確認しておきます。
そして、
\((A – \lambda_i)\)と\((A – \lambda_j)\)は可換、
つまり
\begin{align*} (A – \lambda_i)(A – \lambda_j) = (A – \lambda_j) (A – \lambda_i) \end{align*}
とかける順番を交換できることに注意すると、
\begin{align*} (A – \lambda_2)(A – \lambda_3) \cdots (A – \lambda_m)(c_1 v_1 + \cdots + c_m v_m ) &= (A – \lambda_2)(A – \lambda_3) \cdots (A – \lambda_m) c_1 v_1 \\&= (\lambda_1 – \lambda_2)(\lambda_1 – \lambda_3) \cdots (\lambda_1 – \lambda_m) c_1 v_1 \end{align*}
となります。
\begin{align*}i \neq j \Rightarrow \lambda_i \neq \lambda_j \end{align*}
であるので、
\begin{align*} \lambda_1 – \lambda_2 \neq 0, \lambda_1 – \lambda_3 \neq 0, \ldots, \lambda_1 – \lambda_m \neq 0 \end{align*}
となるので、\(c_1 = 0\)であることがわかります。
同様に、\(c_2 = 0, c_3 = 0, \ldots, c_m = 0\)が成り立つので、 一次独立であることが示せます。
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