斉次関数・同次関数を簡単解説
斉次関数と同次関数は同じ?
こんにちは、数学を勉強していると人生で一度は\(n\) 次同次関数と\(n\) 次斉次関数という言葉を聞いたことがあると思います。
これら二つの言葉は同じ意味です。英語ではどちらもHomogeneous funtionといいます。
ここでは、斉次関数という言い方を採用することにしましょう。
斉次関数の定義
\(n\) 次斉次関数の定義は素朴には\(f(tx) = t^n f(x)\) が成り立つような関数のことです。
このパラメータの\(n\) は別に自然数だけを考えなければいけないわけではありません。実数全体を考えても大丈夫です。
状況に応じて様々な定義を採用することができると思いますが、今回はパラメータを実数として、二変数の実数値関数を考えることにしましょう。
\(\alpha \in \mathbb R\) とする。\(f: \mathbb R \times \mathbb R \rightarrow \mathbb R\) は
任意の\((x, y) \in \mathbb R \times \mathbb R, t >0\) に対して
\begin{align*} f(tx, ty) = t^n f(x, y)\end{align*}
がなりたつとき、\(\alpha\) 次斉次関数という。
\(0\) を除く理由
ここで、\(t > 0\) のように\(0\) を除いている理由について考えてみます。別に\(0\) を含めるとダメという訳ではありませんが。
試しに、\(0\) もありにして考えてみましょう。パラメータは\(\alpha \geq 0\) で考えてみることにします。\(f(0, 0) = f(0 \dot x, 0 \dot y) = 0^\alpha f(x, y) = 0\) となります。したがって、原点で必ず\(0\) という値をとるようになります。
それは困る、という場合には\(0\) を除くことにしましょう。
見易くするための新たな関数
単に見易くするために、
\begin{align*} F(t, x, y) := f(tx, ty) \end{align*}
として新たな関数を定めることにしましょう。
斉次関数の観察その1: 斉次関数の微分
斉次関数の性質について考えてみましょう。
斉次関数\(f\) として微分可能な関数を考えることにします。
\begin{align*} F(t, x, y) = f(tx, ty) = t^\alpha f(x, y) = t F(1, x, y)\end{align*}
が成り立ちます。そこで\(x, y\) について微分してみます。\(F(t, x, y) = f(tx, ty) \) なので、
\begin{align*} \partial_x F(t, x, y) = t (\partial_1 f) (tx, ty) \end{align*}
となります。ここで、\((\partial_1 f) \) は\(f(x, y)\) を\(x\) について微分する記号です。
また、\(F(t, x, y) = t^\alpha f(x, y) \) なので、
\begin{align*} \partial_x F(t, x, y) = t^\alpha (\partial_1 f) (x, y) \end{align*}
が成り立ちます。これらを合わせてみると、\( t (\partial_1 f) (tx, ty) = t^\alpha (\partial_1 f) (x, y)\) なので、
\begin{align*} (\partial_1 f) (tx, ty) = t^{\alpha – 1} (\partial_1 f) (x, y) \end{align*}
が成り立ちます。ここまでの話をまとめると、
\(\alpha \) 次斉次関数の微分は\(\alpha – 1\) 次斉次関数になる。
ということが言えます。
斉次関数の観察その2: 斉次関数のオイラーの定理
ここでも斉次関数\(f\) として微分可能な関数を考えることにします。\(F(t, x, y) := f(tx, ty)\) を考えます。
\(t\) について微分してみると、
\begin{align*} \partial_t F(t, x, y) = x (\partial_1 f)(tx, ty) + y (\partial_2 f)(tx, ty)\end{align*}
が成り立ちます。ここで、\(\partial_1, \partial_2\) はそれぞれ\(x, y\) についての微分を表しています。また、\(F(t, x, y) = t^\alpha f(x, y)\)
でもあるので、
\begin{align*} \partial_t F(t, x, y) = \alpha t^{\alpha -1 } f(x, y) \end{align*}
でもあります。
そこで\(t = 1\) とすることで、
\begin{align*} x (\partial_1 f)(x, y) + y (\partial_2 f)(x, y) = \alpha f(x, y)\end{align*}
が成り立ちます。まとめると、
\(f\) を\(\alpha \) 次斉次関数とする。このとき、
\begin{align*} x (\partial_1 f)(x, y) + y (\partial_2 f)(x, y) = \alpha f(x, y) \end{align*}
が成り立つ。
斉次関数の観察その3: 0次斉次関数
\(0\) 次斉次関数を考えてみます。\(f(tx, ty) = f(x, y)\) ということです。
斉次関数が原点\(0\) で連続であるような場合を考えてみましょう。
任意の点\((x, y)\) を考えます。\(\lim_{t \rightarrow 0} (tx, ty) = (0, 0)\) であるので、
\begin{align*} f(0, 0) = \lim_t f(tx, ty) = \lim_t f(x, y) = f(x, y) \end{align*}
が成り立ちます。まとめると次のようなことが言えます。
\(0\) 次斉次関数は、原点で連続ならば定数関数である。
※もちろん、原点で連続でなければこれは成立しません。
原点を除いた斉次関数
斉次関数を考える上で、定義域を\(\mathbb R^n\) のものに限定して考えると、
\begin{align*} \frac{1}{x} \end{align*}
のような関数を考えることができません。定義域が\(\mathbb R^n \setminus 0\) であるものに対しても同様にして斉次関数を定義してやり、この関数を\(-1\) 次斉次関数と呼べるようにすることができます。
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