事故発生件数がポアソン分布に従う1件目控除つき保険の期待支払額の計算方法

この記事では、事故発生件数がポアソン分布に従う1件目控除つき保険の期待支払額を計算します。

事故の発生件数が平均パラメータ\(\lambda\)のポアソン分布に従うとします。
1件目の事故に対しては支払いはなく、2件目の事故から、1件あたり\(L\)円支払われるとします。
例えば、事故の総数が1件であれば、保険金は\(0\)円です。
また、例えば事故が4件であれば、\(3L\)円支払われます。

発生件数はポアソン分布に従うので、発生件数を確率変数\(N\)で表すと、
\begin{align*} N \sim Po(\lambda) \end{align*}
です。

支払われる保険金は、
\begin{align*} \max \{ N – 1, 0\} \cdot L\end{align*}
です。

\begin{align*} E\left( \max \{ N – 1, 0\} \cdot L \right)\end{align*}
を求めてみましょう。

\begin{align*} E\left( \max \{ N – 1, 0\} \cdot L \right) = L E\left( \max \{ N – 1, 0\} \right)\end{align*}
なので、結局のところ、
\begin{align*} E\left( \max \{ N – 1, 0\} \right) \end{align*}
を求めればよいです。

\begin{align*} &E\left( \max{ N – 1, 0} \right)
\\&=0\cdot P(N=0) + 0\cdot P(N=1) + 1 \cdot P(N=2) + 2\cdot P(N=3) + \cdots
\\&= \sum_{k = 1^\infty} (k-1) P(N = k)
\\& = \sum_{k = 1^\infty} k P(N = k) – \sum_{k = 1^\infty} P(N = k)
\\& = \sum_{k = 1^\infty} k P(N = k) – \left(1 – P(N = 0) \right)
\\& = \lambda – \left(1 – e^{-\lambda} \right)
\end{align*}
となります。
ただし、
\begin{align*}\sum_{k = 1^\infty} k P(N = k) = E(N) = \lambda \end{align*}
であることを最後に用いています。
従って、
\begin{align*}E\left( \max \{ N – 1, 0\} \right)= \left(\lambda – \left(1 – e^{-\lambda} \right) \right) \end{align*}
なので

命題

事故の発生件数が平均パラメータ\(\lambda\)のポアソン分布に従うとします。
1件目の事故に対しては支払いはなく、2件目の事故から、1件あたり\(L\)円支払われるとします。
このとき、期待支払額は、
\begin{align*} E\left( \max \{ N – 1, 0 \} L \right) = L \left(\lambda – \left(1 – e^{-\lambda} \right) \right) \end{align*}
となります。

おまけ:保険の合成としてみなす方法

また、この支払いパターンは、
事故の発生件数が平均パラメータ\(\lambda\)のポアソン分布に従うとし、
事故1件目から、1件あたり\(L\)円支払われる保険から、
確率\(e^{-\lambda}\)で支払い\(0\)円、\(1 – e^{-\lambda}\)で支払い\(L\)円
というベルヌーイ分布(を\(L\)倍)に従う保険を引いた保険としてみなすことができます。

事故の発生件数が平均パラメータ\(\lambda\)のポアソン分布に従うとし、事故1件目から、1件あたり\(1\)円支払われる保険の支払額を
\begin{align*} S\end{align*}
そして、事故の発生件数が平均パラメータ\(\lambda\)のポアソン分布に従うとし、事故1件目から、1件あたり$latex 1円支払われる保険の支払額を
\begin{align*} T \end{align*}
とすると、
求めたい保険の支払額は、
\begin{align*} (S – T)\cdot L \end{align*}
となります。
つまり、期待支払額を求めるにはとりあえず
\begin{align*} E(S – T)\end{align*}
を求めれば良いことがわかります。
\begin{align*}E(S – T) = E(S) – E(T) \end{align*}
であり、
\begin{align*} E(S) = 2, \quad E(T) = 1 – e^{-2} \end{align*}
なので、
\begin{align*} E\left((S – T)\cdot L \right) = L \left( 2 – (1 – e^{-2})\right) \end{align*}
であることがわかります。

この考え方を応用すると、\(n\)件目まで控除があるケースも、
基本となる保険から、ベルヌーイ分布に従う保険\(n\)個を引いたものとしてとらえることで、期待支払額を考えることができます。

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