小中高生向け数学の問題の中でも特に微妙なものの一つが、「次の数列の一般項を求めよ」という問題です。学生はしばしば、与えられた数列のパターンを見つけ、その一般項を導き出すよう求められます。しかし、この種の問題には答えが一意に定まらないという問題があります。
「次の数列の一般項を求めよ」という問題が青少年の健全な育成を妨げる理由
2023年にX(旧Twitter)上で次のようなポストが話題になりました。
内容は、次の数列の一般項を求めよという問題は、答えが一意に定まらない(それどころか、もはや何を書いても答えになるとすら言える)というものです。
数学は、公理と定義から出発して、厳密な論理を積み重ねることによって結論を導き出す行為です。このプロセスは非常に構造化され、定義されたルールに基づいています。この論理的なアプローチは、数学の厳密さと一貫性を保証するものです。
数列の一般項を求める問題では、しばしば学生は与えられた数列から直感的に規則を見つけ出すよう求められます。しかし、これは数学の本質とは異なるアプローチであり、数学が実験・直観・個人的な経験に依存する分野であるかのような誤解を生むことがあります。数列の一般項を求める際には、「感覚的な」解答が正解となり、そこに確かな論理は存在しません。
実際のところ、
例えば、次のような問題を考えてみましょう。
次の数列
ちょうど各項が前の項の2倍になっているので、答えは
と求めるのが普通です。
しかしながら、
が全て異なる
で、
を満たすものが一意に存在する。
という命題が成り立ちます。
この事実は、データ分析・統計学・機械学習を少しでも学んだことがある人ならよく理解している事実だと思います。
証明は、
という連立方程式を解くことに帰着されます。これを行列の形でかくと、
となります。
はヴァンデルモンド行列で、その行列式は
であることがよく知られています。
従って、
故に、
は正則であるため、逆行列を持ちます。つまり、
により多項式の係数
このことを、数列の一般項を求める問題に適用してみましょう。問題を再掲します。
次の数列
この問題を
という平面上の5点だと思うことにします。この5点を通る4次多項式
を求めれば、
は確かに一般項になります。つまり、
を解けば良いということになります。
「次の数列の一般項を求めよ」という問題は、数学の感覚を磨く訓練としては良いかもしれません。しかし、この種の問題を用いる際には、数学の論理的かつ構造的な側面を学生に伝えることが重要です。数学は単に直観や感覚に頼る学問ではなく、論理的かつ体系的な思考に基づく学問であることを、私たちは常に意識しておくべきです。
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