行列の積が結合則を満たすことの証明をわかりやすく解説

行列の積が結合則を満たすことの証明をわかりやすく解説。数学の基礎である線形代数のうち、行列の積の性質は非常に重要です。今回は行列の積の性質のうち、結合側を証明します。

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行列の積が結合則を満たすことの証明をわかりやすく解説

\(A, B\) をそれぞれ\((l, m), (m, n)\) 行列とすると、行列の積\(AB\)の第\((i, k)\)成分は
\begin{align*} \left( AB\right)_{ik} = \sum_{j=1}^m a_{ij}b_{jk} \end{align*}
により定められます。

このことから次の命題が成り立ちます。

命題:行列の積が結合側を満たすこと

\(A, B, C\) をそれぞれ\((l, m), (m, n), (n, p)\) 行列とする。このとき、
\begin{align*} (AB)C = A(BC) \end{align*}
が成り立つ。

証明:行列\((AB)C\) の\((i, l)\) 成分は定義から
\begin{align*} \sum_{k = 1}^n \left(\sum_{j=1}^m a_{ij}b_{jk} \right) c_{kl} \end{align*}
です。一方で、行列\(A(BC)\) の\((i, l)\) 成分は定義から、
\begin{align*} \sum_{j = 1}^m a_{ij} \left( \sum_{k=1}^n b_{jk} c_{kl} \right) \end{align*}
です。

有限和であることから、総和の順序を自由に入れ替えてよいので
\begin{align*} \sum_{k = 1}^n \left(\sum_{j=1}^m a_{ij}b_{jk} \right) c_{kl} = \sum_{k = 1}^n \sum_{j=1}^m a_{ij}b_{jk} c_{kl} \end{align*}
\begin{align*} \sum_{j = 1}^m a_{ij} \left( \sum_{k=1}^n b_{jk} c_{kl} \right) = \sum_{k = 1}^n \sum_{j=1}^m a_{ij}b_{jk} c_{kl} \end{align*}
となり、
\begin{align*} \sum_{k = 1}^n \left(\sum_{j=1}^m a_{ij}b_{jk} \right) c_{kl} = \sum_{j = 1}^m a_{ij} \left( \sum_{k=1}^n b_{jk} c_{kl} \right) \end{align*}
となります。

従って、行列\((AB)C\)と\(A(BC)\)の全ての成分が一致するので、両者は一致します。

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