数列の平均・チェザロ平均の極限の証明をわかりやすく解説

チェザロ平均(チェザロへいきん、英: Cesàro mean, Cesàro average)とは、数列の最初の有限個の項から作られる算術平均のことです。数列の平均・チェザロ平均の極限についての命題をイプシロン・デルタ論法を用いてわかりやすく解説します。

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数列の平均・チェザロ平均の極限の証明をわかりやすく解説

実数列

\begin{align*} a_1, a_2, \dots \end{align*}

の有限項までの算術平均

\begin{align*} \frac{1}{n} \sum_{k = 1}^n a_k \end{align*}

のことをチェザロ平均といいます。なんと、チェザロ平均の極限は、考えている数列の極限と一致します。

命題

\begin{align*} a_n \rightarrow a \in ( -\infty, \infty) \quad \Rightarrow \quad \frac{1}{n} \sum_{k = 1}^n a_k \rightarrow 0 \end{align*}

直感的な説明

なぜこのようなことが起きるのでしょうか。

ある数列\(\{ a_n \}\)が\(a\) に収束する場合、その意味は「数列の番号が大きくなるにつれて、\(a_n\)が次第に\(a\)に近づいていく」ということです。したがって、数列が進んでいくと、考えている数列は事実上\( a, a, a, a, \dots \)のような数列になります。

もしこの数列の非常に大きな番号まで見たとすると、その範囲にはほとんど \(a\) しか含まれていません。これらの \(a\) の値をすべて足し合わせて平均を計算すると、結果は \(a \)そのものになるのが直感的に理解できます。

事前準備

事前準備として、

\begin{align*} a_n \rightarrow 0 \quad \Rightarrow \quad \frac{1}{n} \sum_{k = 1}^n a_k \rightarrow 0 \end{align*}

を証明してみましょう。

証明:任意に\(\epsilon\) をとります。\(a_n\) は\(0\)に収束するので、十分大きい番号\(N \in \mathbb N\) で\(n \geq N\) ならば

\begin{align*} |a_n| \leq \frac{\epsilon }{2}\end{align*}

となるものがとれます。ここで、数列の\(N\)番目までの和を次のように書くことにします。

\begin{align*} A = \sum_{k = 1}^N a_k \end{align*}

さてここで適当な\(M \in \mathbb N\) に対して\(N + M\)番目までの和を考えてみると、
\(N+1, N+2, \dots \) 番目の\(a_k\) の値は\(\frac{\epsilon }{2}\) 以下なので、

\begin{align*} \sum_{k = 1}^{N + M} a_k \leq A + M \frac{\epsilon }{2} \end{align*}

という式が得られます。平均をとってみると、

\begin{align*} \frac{1}{N+M}\sum_{k = 1}^{N + M} a_k &= \frac{A + M \frac{\epsilon }{2} }{N+M} \\&= \frac{A + M \frac{\epsilon }{2}}{M} \\&= \frac{A}{M} + \frac{\epsilon}{2}\end{align*}

となります。
つまり、\(M\) を\(\frac{A}{M} \leq \frac{\epsilon}{2} \)となるくらい十分大きくとってやれば、

\begin{align*} \frac{1}{N+M}\sum_{k = 1}^{N + M} a_k \leq \frac{\epsilon}{2} + \frac{\epsilon}{2} = \epsilon \end{align*}

となります。
このことは、\(\frac{1}{n} \sum_{k = 1}^n a_k \rightarrow 0\) を意味していますので、求めている結果が得られました。

証明:事前準備を踏まえて

それでは、事前準備を踏まえてチェザロ平均の極限についての命題の証明を行っていきたいと思います。改めて主張を書いておきましょう。

定理:チェザロ平均の極限

\begin{align*} a_n \rightarrow a \in ( -\infty, \infty) \quad \Rightarrow \quad \frac{1}{n} \sum_{k = 1}^n a_k \rightarrow 0 \end{align*}

証明:まず、

\begin{align*} b_n = a_n – a \end{align*}

とおきます。すると、\(a_n \rightarrow a\) なので、

\begin{align*} b_n \rightarrow 0 \end{align*}

となります。つまり、事前準備で証明したことから、

\begin{align*} \frac{1}{n} \sum_{k = 1}^n b_k \rightarrow 0 \end{align*}

となるわけですが、左辺は

\begin{align*}\frac{1}{n} \sum_{k = 1}^n b_k = \frac{1}{n} \sum_{k = 1}^n (a_k – a) = \left( \frac{1}{n} \sum_{k = 1}^n a_k \right) – a \end{align*}

ですので、これで証明が完了しました。

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