なぜ正則な行列が零因子でないのか、数学的に見ていきましょう。
目次
正則な行列は零因子でないことの証明
\(A\) を\(n\) 次正方行列とします。
(非自明な)左零因子というのは、零行列ではないが、\(B \neq 0\) で\(A B = 0\) を満たすものが存在する行列です。
(非自明な)右零因子というのは、零行列ではないが、\(B \neq 0\) で\(B A= 0\) を満たすものが存在する行列です。
非自明な両側零因子とは、(非自明な)左零因子かつ(非自明な)右零因子である行列です。
命題
正則な行列は零因子でない。
という命題が成立します。
証明
\(A\) が左零因子とし仮定して背理法により矛盾を導きます。
\(A\) は左零因子であるので、\(n\) 次正方行列\(B \neq 0\) で
\begin{align*} AB = 0\end{align*}
であるものが存在します。一方で、
\(AB = 0\) の両辺に\(A^{-1}\)を左からかけると:
\begin{align*} B = 0\end{align*}
となります。これは、\(B \neq 0\) と矛盾します。
従って、\(A\) は左零因子ではありません。
あわせて読みたい記事
非正則な正方行列が零行列または零因子であることの証明
この記事では、非正則な正方行列が零行列または零因子であることを証明します。まず、いくつかの基本的な定義を整理し、その後で証明に進みます。
コメント