この記事では、非正則な正方行列が零行列または零因子であることを証明します。まず、いくつかの基本的な定義を整理し、その後で証明に進みます。
非正則な正方行列が零行列または零因子であることの証明
定義を整理していきましょう。
一方で、行列式がゼロである場合、
零行列というのは、全成分が
(左)零因子というのは、零行列ではないが、
(補足1):
(補足2):行列全体は可換でないので、左零因子と右零因子は区別されます。従って両側零因子であることを示すには、右零因子であることを示す必要がありますが、転置行列が左零因子であることを示せばよいので、正方行列が左零因子であることが示せれば、自動的に右零因子にもなるので、結果的に自動的に両側零因子になります。
証明
ですので、
が成り立ちます。
したがって少なくとも一つの固有値
次に、
を考えます。
となります。
このことは、
具体例
具体例をみてみましょう。
という行列を考えます。行列式が
なので、固有値は
固有値
がとれます。
となるので、確かに
は(左)零因子であることが確かめられました。
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