ほとんど確実な事象との共通部分は確率を変えないことを証明します。 このことは、確率論で非常に基本的な事実であるので、しっかりと押さえておきましょう。
ほとんど確実な事象との共通部分は確率を変えないことの証明
まず初めに、確率空間\((\Omega, \Sigma, p)\)を考えます。\(\Omega\)は集合、\(\Sigma\)は\(sigma\)代数、そして\(p\)は確率測度です。
「ほとんど確実な事象」とは何かを定義します。事象\(A \in \Sigma\) が、\(p(A) = 1\)であれば、この\(A\)をほとんど確実な事象と呼びます。
今回の核心に迫るために、\(\Sigma\)の中から任意の事象\(B\)を選び、ほとんど確実な事象\(A\)との共通部分\(B \cap A\)の確率を考えます。
予想される結果として、以下の式が成り立ちます。
\begin{align*} p(B \cap A) = p(B) \end{align*}
結論を先に述べると、予想通りこれは成立します。
これは、ほとんど確実な事象\(A\)と他の事象\(B\)との共通部分をとっても、\(B\)の確率には影響を及ぼさないことを意味します。
事前準備:補集合である事象の確率
さて、証明に移る前に、補集合の確率について思い出してみましょう。任意の事象\(E \in \Sigma\)に対して、$E \in \Sigma$とその補集合$E^c \in \Sigma$は互いに排反であり、その和は全体$\Omega$となるため、以下の式が成り立ちます。
\begin{align*} 1 = p(\Omega) = p(E^c \cup E) = p(E^c) + p(E) \end{align*}
これを用いて、
\begin{align*} p(E^c) = 1 – p(E) \end{align*}
であることが示されます。
念の為補足しておくと、$E \in \Sigma$ ならば$E^c \in \Sigma$ となるのは、$\Sigma$ が$\sigma$代数であるからです。
本題:ほとんど確実な事象との共通部分は確率を変えないことの証明
それでは、本題の証明に戻りましょう。事前準備から\(p(A^c) = 1 – p(A) = 0\)であることに注意し、次のように展開します。
\begin{align*} p(B^c) &\leq p(B^c \cup A^c) \&\leq p(B^c) + p(A^c) \&= p(B^c) + 0 \end{align*}
この結果から、
\begin{align*} p(B^c) = p(B^c \cup A^c) \end{align*}
が得られます。
さらに、\((B^c \cup A^c)^c = B \cap A\)であることを考慮すると、以下の関係式が導かれます。
\begin{align*} 1 – p(B) = 1 – p(B \cap A ) \end{align*}
これをさらに整理すると、最終的な結果として以下の式が得られます。
\begin{align*} p(B) = p(B \cap A) \end{align*}
これは、ほとんど確実な事象\(A\)と任意の事象\(B\)との共通部分をとっても、\(B\)の確率は変わらないことを示しています。これにより、私たちの主張が証明されました。
要するに、ほとんど確実に起こる事象\(A\)と、もう一つの事象\(B\)の関係を考えた時、\(A\)がほとんど確実に起こることが\(B\)の確率に影響を及ぼさないことがわかりました。これは確率論において基本的かつ重要な性質であり、理解しておくことが重要です。
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