望遠鏡和で数列の和を求める計算例

望遠鏡和(Telescoping sum)あるいは望遠鏡公式(Telescoping formula)と呼ばれる方法で数列の和や級数の値を計算してみましょう。望遠鏡級数(Telescoping series)と呼ばれることもあります。

これは、数列や級数の和を簡単に計算するための数学的な手法です。この名称は、数列の項が「望遠鏡のように」伸び縮みして結局は限られた数の項だけが残る様子にちなんでいるらしいです。

望遠鏡公式を用いるときは、数列の各項を2つ以上の部分に分解し、その分解した部分が互いに打ち消しあう形になることを利用します。

目次

望遠鏡和で数列の和を求める計算例

それでは実際に望遠鏡和の手法を用いてさまざまな数列の和を計算してみましょう。特に注目すべきなのは、計算例その2では二乗の和の公式を得ることができていることですね。

計算例その1

\begin{align*} \sum_{k = 1}^n \left( (k +1)^2 – k^2 \right)  \end{align*}

を考えてみます。

\((k +1)^2 – k^2  = k^2 + 2k +  1 – k^2 = 2 k + 1\)なので、

\begin{align*} \sum_{k = 1}^n \left( (k +1)^2 – k^2 \right) = \sum_{k = 1}^n \left( 2 k + 1 \right) \end{align*}

である一方で、左辺は素朴に計算していくと、項同士が次々に打ち消されていくことに注意すると、

\begin{align*} 2^2 – 1^2 + 3^2 – 2^2 + \cdots + (n + 1) ^2 – n^2 &= (n + 1) ^2 – 1^ 2 \\&= n^2 + 2n \end{align*}

と計算できるので、

\begin{align*}  \sum_{k = 1}^n \left( 2 k + 1 \right) = n^2 + 2n  \end{align*}

と計算することができます。

計算例その2

\begin{align*} \sum_{k = 1}^n \left( (k +1)^3 – k^3 \right)  \end{align*}

を考えてみます。

\((k +1)^3 – k^3 = 3k^2 + 3k + 1\) なので、

\begin{align*} \sum_{k = 1}^n \left( (k +1)^3 – k^3 \right) = \sum_{k = 1}^n \left( 3k^2 + 3k + 1 \right) \end{align*}

である一方で、

\begin{align*} \sum_{k = 1}^n \left( (k +1)^3 – k^3 \right) = (n + 1) ^3 – 1 \end{align*}

なので、

\begin{align*} \sum_{k = 1}^n \left( 3k^2 + 3k + 1 \right) = (n + 1) ^3 – 1  \end{align*}

と計算することができます。

特にこのことから、

\begin{align*} \sum_{k = 1}^n 3 k^2 &=  (n + 1) ^3 – 1 – \sum_{k = 1}^n 3k – \sum_{k = 1}^n 1 \\&= (n + 1) ^3 – 1 – \frac{3n(n+1)}{2} – n \\& = \frac{2n ^3 + 6n^2 + 6n – 3n^2 – 3n – 2n}{2} \\&= \frac{2n^3 + 3n^2 + n}{2} = \frac{n (2n + 1)(n +1)}{2}\end{align*}

と計算することができます。

つまり、

\begin{align*} \sum_{k = 1}^n  k^2 = \frac{n (2n + 1)(n +1)}{6} \end{align*}

と計算することができるんですね。

計算例その3

続いて、

\begin{align*} \sum_{k = 1}^n  \left( \frac{1}{k} – \frac{1}{k + 1} \right) \end{align*}

を考えてみましょう。

\begin{align*} \frac{1}{k} – \frac{1}{k + 1} = \frac{1}{k (k + 1)} \end{align*}

である一方で、

\begin{align*} \sum_{k = 1}^n  \left( \frac{1}{k} – \frac{1}{k + 1} \right) = 1- \frac{1}{n +1} \end{align*}

なので、

\begin{align*} \sum_{k = 1}^n  \frac{1}{k (k + 1)} = 1- \frac{1}{n +1} \end{align*}

と計算することができますね。

計算例その4

さらに次のような計算も考えてみましょう。

\begin{align*} \sum_{k = 1}^n  \left( \log(k + 1) –  \log k   \right) \end{align*}

すると、\(\log(k + 1) –  \log k  = \log (1 + \frac{1}{k}) \) なので、

\begin{align*} \sum_{k = 1}^n  \left( \log(k + 1) –  \log k   \right) = \sum_{k = 1}^n \log (1 + \frac{1}{k}) = \log \left( \prod_{k = 1}^n ( 1 + \frac{1}{k})\right)\end{align*}

である一方で、

\begin{align*} \sum_{k = 1}^n  \left( \log(k + 1) –  \log k   \right) = \log (n + 1) \end{align*}

なので、

\begin{align*} \prod_{k = 1}^n ( 1 + \frac{1}{k}) = n + 1 \end{align*}

と計算することができます。

まあこれは普通に

\begin{align*} \prod_{k = 1}^n ( 1 + \frac{1}{k}) = \frac{2 \cdots (n +1) }{1 \cdots n} = n + 1\end{align*}

と計算できるんですけどね。

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